漢方薬・生薬

苓甘姜味辛夏仁湯はどんな漢方薬?気になる効果効能・副作用について

漢方薬の元となる天然の生薬には、いろいろな効果効能があることが知られています。

古来、その組み合わせを何通りも繰り返して、現在の漢方薬が作られてきました。

経験的に組み合わせて作られているため、西洋薬ほど効果がないようにも思われるかもしれませんが、実は西洋薬の新薬を漢方薬の由来となる天然の生薬から作り出す試みもあり、その効果効能は裏付けられたものとなっています。

今回のテーマである苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)も同じです。

そこで、苓甘姜味辛夏仁湯の効果効能や副作用、そして安全に苓甘姜味辛夏仁湯を使うための注意点などについて解説します。

苓甘姜味辛夏仁湯とは?

漢方薬
苓甘姜味辛夏仁湯は、「リョウカンキョウミシンゲニントウ」と読む漢方薬で、製品番号は119番です。

金匱要略という古い医学書に載っている歴史のある漢方薬です。

ツムラが製造している医療機関での処方用のツムラ苓甘姜味辛夏仁湯エキス細粒だけでなく、小太郎漢方製薬のコタロー苓甘姜味辛夏仁湯エキス細粒のように第二類医薬品として市販されている製剤もあります。

両者の違いは、煎じる必要があるかどうかだけで、効果効能や副作用などに違いはありません。

苓甘姜味辛夏仁湯の性状

苓甘姜味辛夏仁湯は、1包あたり2.5[g]の粉薬です。

淡い褐色で、特異なにおいがします。

漢方薬全般に言えることですが、天然の生薬から作られているために、製剤ごとに多少の色の違いがあります。

色が違っていても、効果には影響しませんので大丈夫です。

辛い上に強い酸っぱさを伴う味がします。

苓甘姜味辛夏仁湯の生薬

苓甘姜味辛夏仁湯は、『半夏(ハンゲ)』『杏仁(キョウニン)』『五味子(ゴミシ)』『細辛(サイシン)』『茯苓(ブクリョウ)』『乾姜(カンキョウ)』『甘草(カンゾウ)』の7種類の生薬で作られています。

生薬 1包(2.5[g])あたりの含有量
半夏(ハンゲ) 1.33[g]
杏仁(キョウニン) 1.33[g]
五味子(ゴミシ) 1.0[g]
細辛(サイシン) 0.67[g]
茯苓(ブクリョウ) 1.33[g]
乾姜(カンキョウ) 0.67[g]
甘草(カンゾウ) 0.67[g]

『半夏(ハンゲ)』
:たんを出にくくし、吐き気を抑える効果。

『杏仁(キョウニン)』
:咳を抑え、たんを出にくくする効果。

『五味子(ゴミシ)』
:咳止めやお口や喉の乾燥改善、喘息を解消する効果。

『細辛(サイシン)』
:咳止めや炎症どめの効果。

『茯苓(ブクリョウ)』
:滋養強壮やおしっこを出しやすくする効果。

『乾姜(カンキョウ)』
:胃腸の調子を整え、食欲を高める効果。

『甘草(カンゾウ)』
:精神的な緊張状態を緩和する効果。

このほか、ステアリン酸マグネシウムや乳糖水和物、ショ糖脂肪酸エステルが添加物として配合されています。

これら7種類の生薬の組み合わせで、咳やたん、喘息によるアレルギー症状を抑えたり、胃腸や腎臓の働きを整えるような効果を発揮させています。

苓甘姜味辛夏仁湯の証

漢方薬を処方する時の判断材料として用いられるのが、漢方医学における『証』です。

そのため、『証』は漢方医学での診断法とみなすことができます。

漢方医は、経験に基づいて患者さんの症状に加えて体質も合わせて、『証』を判断します。

『証』には、『虚実』や『陰陽』があります。

『虚実』は、体力の充実度合いをみるもので、『実( ジツ)』は体力が充実した体質、『虚(キョ)』は虚弱な体質をさします。

『陰陽』は、何らかの有害物質が身体に入ってきた時の、身体側の反応のことで、西洋医学の炎症反応に近い概念と言えます。

『陽』では身体が火照るなど身体が熱くなる反応、反対に、『陰』では冷え症になるなど身体が冷える反応などを指しています。

苓甘姜味辛夏仁湯の『証』は、『やや虚(キョ)』〜『中等度』なので、やや虚弱体質から体力普通な人に適しています。

苓甘姜味辛夏仁湯が適する症状

咳をする女性
苓甘姜味辛夏仁湯は、たんを伴う気管支炎や、気管支喘息といった呼吸器系の症状、動悸やむくみに用いられる漢方薬です。

中でも胃腸が弱く、冷え性の人に適しています。

苓甘姜味辛夏仁湯の効果・効能および副作用

苓甘姜味辛夏仁湯は、貧血や冷え性の人の気管支炎や気管支喘息、動悸、腎臓病によるむくみの解消に効果があります。

通常は、苓甘姜味辛夏仁湯の服用開始から3週間ほどで効果を感じられるようになりますが、これには個人差があり、多少前後することがあります。

もし、1ヶ月程度服用を続けても、なかなか効果が実感できない場合は、医師や薬剤師に一度相談してみてください。

苓甘姜味辛夏仁湯の副作用の報告はあまりないようです。

ですが、稀に『偽アルドステロン症』『ミオパチー』という重篤な副作用が現れることがあるようです。

アルドステロンとは、血圧を上昇させるホルモンです。

偽アルドステロン症とは、アルドステロンを使っていないのにもかかわらず、血圧が上昇したり、体がむくんだりする病気です。

ミオパチーとは、筋肉の異常により生じる病気のことです。

下記に示す症状が現れた場合は、上記の副作用が起こっている可能性がありますので、服用を中止して、すぐに医師の診察を受けるようにしてください。

症状 副作用として疑われる病気
手足のだるさ
手足のこわばり
顔や手足のむくみ
偽アルドステロン症
身体のだるさ
手足の脱力感
手足の引きつり
手足のしびれ
ミオパチー

苓甘姜味辛夏仁湯の飲み方

苓甘姜味辛夏仁湯は、食前、もしくは食間(食後2〜3時間後のこと)に服用します。

食後に服用するのではないので、間違えないように気をつけてください。

苓甘姜味辛夏仁湯を服用するときは、水かお白湯で飲むようにしましょう。

苓甘姜味辛夏仁湯の使用上の注意点

苓甘姜味辛夏仁湯を安全に服用するために、知っておくべき注意点がいくつかあります。

飲み忘れた場合

苓甘姜味辛夏仁湯は、原則的に1日3回服用することになっていますが、ついつい飲むのを忘れてしまうこともあるでしょう。

忘れたら、忘れたことに気付いたタイミングで、すぐに飲んでいただければ大丈夫です。

ですが、次の服用時間まで2時間を切っているという時は服用を中止してください。

なお、飲むのを忘れからといって、2回分を1度に飲んではいけません。

くれぐれも注意してください。

苓甘姜味辛夏仁湯を服用する前に相談したほうがいい場合

次に記載した項目にひとつでも当てはまる方は、服用する前に医師や薬剤師と相談しましょう。

  • 苓甘姜味辛夏仁湯だけでなく、何らかの薬で、以前にかゆみやじんましんなどのアレルギー症状が現れたことがある人
  • 妊娠中、もしくは授乳中の女性
  • 現在、医師から薬を処方されている人
  • 65歳以上の高齢者

注意すべき薬の飲みあわせ

苓甘姜味辛夏仁湯は、甘草を配合した漢方薬や、グリチルリチン製剤という肝臓病の治療などに使われる薬と飲みあわせると、甘草の効果が強くなり、偽アルドステロン症やミオパシーを引き起こすリスクが高まるからです。

まとめ

いかがでしたか?

今回は、苓甘姜味辛夏仁湯の効果効能・副作用について紹介してきました。

苓甘姜味辛夏仁湯は、冷え性で、たんや咳止め、腎臓病、動悸、むくみなどに効果のある漢方薬です。

もし、冷え性の方で、このような症状に悩んでいる方は、苓甘姜味辛夏仁湯をお試しになってみてはいかがでしょうか。

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記事執筆・監修

運営者

漢方生薬 研究所

漢方生薬研究所のスタッフによる執筆・監修記事です。漢方をはじめ、第二類医薬品や第三類薬品、健康食品、サプリメント情報を配信しています。

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