美容・健康

いい明日は、養生から~五行について~

漢方とは?

自然哲学に基づいた古代中国医学が日本に伝わった後、日本の風土や入手可能な生薬にあわせて独自に発展したものです。
広義では漢方薬に限らず、鍼灸、薬膳など、「医学」「薬学」「養生学」のすべてを含みます。

その中でも、漢方で重要とされているのが、生命力、自然治癒力を高めるという「養生」の考え方です。「養生」とは、文字通り「生命を養う」ことで、真の健康に向かって生命力を高めていくことです。
養生では、人間も自然の一部であり、自然のリズムに逆らって暮らすことは、心と体の不調につながると考えます。自然と調和し、自然とともに生きるという基本的なことこそが大切なのです。

現代を生きる私たちにも読み継がれる養生の心得として、『養生訓』があります。養生訓は寿命50歳と言われた江戸時代に84歳まで生きた福岡県出身の儒学者「貝原益軒」が、中国医学書のエッセンスを基にして、71歳で退職後、晩年まで綴った書の一つです。

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養生とは継続が大切。大抵のことは、努力して続けていれば、必ずよい結果が得られる。たとえば、春に種をまいて夏によく養分を与えれば、秋になって必ず収穫が多いようなものである。もし、養生の術を努めて学び、長い期間実行すれば、体は丈夫になって病気もせず、天寿を全うし、長いこと人生を楽しめるのは、当然のことである。この道理を疑ってはならない。
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未病とは?

病気未満の状態をあらわします。
たとえば、なんとなくだるい、疲れやすい、手足が冷える、食欲がないなどで、症状があるにもかかわらず、検査をしても、異常がみつからない場合が多いです。西洋医学においては具体的な診断がつかないため、治療がないものが殆どですが、漢方は症状そのものが診断基準になりますので、治療対象となります。

漢方医学の考え方として、「気血水」があります。人体を動かす機能を担う「気」、人体を動かすために必要である栄養、あるいは運搬を担う血液等を「血」、体を潤したり体温調節などの役割を担う体液を「水」としてこの3要素こそが人体を構成し体内を循環することで健康を保つという考え方です。

「気血水」の3要素のうちどれかが不足したり、巡りが滞るとバランスが崩れて体に不調があらわれます。

「気」が不足する(気虚)とこのような状態が・・・
・疲れやすい
・かぜをひきやすい
・息切れがする

「気」が滞っている(気滞)とこのような状態が・・・
・気分がふさいで憂鬱になりやすい
・のどや胸がつかえる
・お腹がはっていてガスがたまっている感じがする

「血」が不足する(血虚)とこのような状態が・・・
・皮膚が乾燥してつやがない
・めまい、ふらつき
・こむらがえり

「血」が滞っている(おけつ)とこのような状態が・・・
・唇の色が暗い、紫色もしくは青っぽい
・肩こりや腰痛があり、痛みの部位は変わらない
・しみやあざができやすい

「水」が不足する(陰虚)とこのような状態が・・・
・口が乾く
・皮膚が乾燥してカサカサしている
・便秘やコロコロ便

「水」が滞っている(水滞)とこのような状態が・・・
・体が重く、むくみやすい
・頭が重く痛い
・軟便、下痢傾向

五行説とは?

漢方理論を支える自然観のひとつで、万物は「木」「火」「土」「金」「水」という5つの基本要素から成り立つという説です。

上の図は横並びで見ていただきます。
例)五行の木の行→酸・春・肝・目・怒
春は、肝の働きが高ぶりやすく、胃腸の働きが弱くなりやすいと考えます。
肝の高ぶりを抑える旬の野菜をたっぷりと食べることで、同時に自然の甘みをとりいれることができます。

五気とは?

身体を温める、冷やす、という働きを表すものを、寒・涼・温・熱といい、食材の性質があまり著しくなく、作用が比較的穏やかなものを平といいます。

【温・熱】
身体を温める食材で、気・血の流れを良くしたり、新陳代謝を高める働きがあります。冬が旬の食材が多く、色が濃く、地中で生育するものが比較的多いです。また、寒い地域で良く食べられる食材は温める食材が多く、例えば北海道のジンギスカンなどに用いられる羊肉も非常に体を温める食材です。(例)しょうが、ねぎ、にんにくなど

【平】
冷やし過ぎず、温め過ぎず、寒熱どちらにも属さない穏やかな食材、常食に適していています。(例)とうもろこし、山芋、じゃがいも

【寒・涼】
体内の余分な熱を冷まし、身体を冷やす食材。夏の時期や、熱っぽい症状、ほてり、のぼせなどがあるときに。夏が旬の食座が多く、色は薄く、地上で生育するものが多いです。また、白砂糖やお酢は体を冷やす食材です。洋菓子をよく食べたり、健康維持のためにお酢が良いと思って必要以上摂取することで冷え症を起こしている方は多いです。(例)きゅうり、セロリ、大根

帰経とは?

生薬や食材がどの「五臓」に優先して作用するかを示すものです。
気になる症状が、どの五臓のトラブルが原因で起こるのかがわかれば、そこに合った生薬や食材を中心に用いればよいわけです。同じ五味と五性でも、どの帰経に入り優先的に作用するかによって、心と体に対する効能は変わってきます。
しかし、対象にのみアプローチするのではなく、その関連を考えてアプローチすることを良く行います。
たとえば、肺が不調の場合に脾を補うようなことを行いますので、
五臓であれば肝→心→脾→肺→腎(→肝)の循環です。食事で「補う」のであれば各臓器の一つ前の臓器を補うのも大切な考え方です。
図を参考に、バランスを考えて体に合う食材を積極的に摂っていきましょう。

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記事執筆・監修

石井 佳郎

薬剤師として一般調剤から漢方の煎じ処方の調剤まで幅広く対応。
漢方のエキスパートとして処方医師との合同研修会も行う。

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