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熱中症対策の一つに!予防にもおすすめの漢方薬

熱中症の予防対策には、こまめな水分補給に塩分補給、日傘の利用や冷却タオルなどもあります。

ですが、太陽を避け水分を補給するだけでは、十分な対策とはいえません。

ここでは、熱中症についての正しい知識と予防方法について、おすすめの漢方薬もあわせてご紹介します。

体の状態はどうなる?熱中症とは


予防対策をしているつもりでも、気づかないうちに脱水症状が起こっていたり、熱がこもってめまいがしたりするのが、熱中症のこわいところです。

重度の症状になると、自分では対処できなくなることもあります。

熱中症について正しく理解し、効果的な予防対策を考えましょう。

熱中症について

熱中症は、炎天下での活動中におこる「日射病」と、屋内の場合でも体内に熱がこもるなどの「熱射病」などの総称をいいます。

熱中症は、暑いときだけでなく、気温が低くても湿度が高いと注意が必要です。

万が一、周りで熱中症になった方が呼びかけに応じないという状況であれば、迷わず救急車を呼びましょう。

水分補給のためのペットボトルやコップを自分で持てない場合も、医療機関の利用が必要です。

ここでは、3段階の重症度のうち、病院への搬送を必要としない「重症度Ⅰ度」の症状についてみていきます。

屋外での熱中症

屋外で活動していると、体内に熱がこもって、脳への血流不足や脳そのものが高温になることで、めまいや立ちくらみといった熱中症の初期症状が出ることがあります。

暑い中で長時間の作業をするときには、意識的に休憩をとったり、体の熱を冷ますような工夫をしましょう。

太い血管がある首回りや脇の下、太ももの内側を冷やすことで、効果的に熱を冷ますことができます。

また、汗で水分やミネラルが失われていきますので、喉が渇いたと感じる前からこまめな水分補給が必要です。

ただ、水分だけを補給していると、体のミネラルが不足したままになり、血流が悪くなって部分的に痙攣(けいれん)を起こすことがあります。

このような症状が出た場合は、涼しい場所に移動するなどして安静にしましょう。

この場合の水分補給には、一般的なスポーツドリンクなどでおなじみのアイソトニック飲料や、ハイポトニック飲料が適しています。

糖分が気になる方や、より素早い吸収を求めるときには、ハイポトニックタイプのスポーツドリンクや機能性飲料が良いでしょう。

室内でも熱中症の危険が?

意外なことに、室内での熱中症発症率も低くはありません。

例えば料理をしているとき、IH調理の場合でも料理中の蒸気によってキッチンが多湿の状態になります。

また、エアコンを使用しないで就寝するときやタイマーを使って電源を切る場合、深夜にかけて気温が下がっても室内は高温のまま、といったことで熱中症のリスクがあります。

近年では、「暑さ指数」や「熱中症警戒アラート」といった言葉を耳にします。

これは、熱中症リスクが高い気象条件となる場合に、早めに予防対策を取ることができるよう、環境省や気象庁から発信されるものです。

通常の気象情報と同じように、色々なメディアで確認することができますので、賢く利用して快適な室内環境で過ごすようにしましょう。

年齢で考える熱中症

子供や高齢者は、熱中症になりやすいといわれています。

特に、乳幼児や児童は体温調節機能が未熟なので、さらに気を使うなど、注意が必要です。

外で遊びに夢中になりすぎて、自分では喉が渇いたり気分が悪くなったりといった熱中症のサインに気づかないこともあります。

水分補給を促すのはもちろんですが、熱のこもりにくい素材の衣服を着せたり、首元まで隠れる帽子を活用して、保護者がしっかり見守りましょう。

また、高齢者は体温調節機能が落ちてきて暑さを感じにくく、脱水状態になっても自分では気づきにくくなっています。

まだまだ元気だと思っても過信せず、予防対策をしっかりすることが大切です。

熱中症に効果的な漢方薬がある?


漢方薬にも、熱中症のさまざまな症状に対応できるものがあります。

地球温暖化の弊害のようにいわれる事もありますが、熱中症のような症状に対応する漢方薬には、「宋」の時代から使われているものもあります。

ここでは、その中でも市販薬として手に入れやすい、3種類の漢方薬を紹介します。

五苓散(ゴレイサン)

五苓散は、主に水分の代謝機能に働きかけて、調節してくれる漢方薬です。

体力に関わらず使うことができ、体を冷やしたり水分補給をするだけでは追いつかず、水分代謝がうまくできないときの症状に用いられます。

熱中症に限らず、水分代謝の低下が原因の症状にも適応していますので、常備しておくのもおすすめです。

その効能や効果について、具体的にみていきましょう。

効能効果

喉が渇いて、尿量が減少しているときの以下の症状に用いられます。

むくみ、ネフローゼ(尿に蛋白が出てむくみが出る症状)、二日酔い、急性胃炎、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水(お腹の中がポチャポチャするような感じ)、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病など

利尿作用がある生薬を中心に処方されていますが、頭痛や吐き気がするとき、二日酔いなどにも効果を発揮します。

生薬

五苓散は、主に水分の代謝によい、以下の生薬の組み合わせで成り立っています。

  • 沢瀉(タクシャ)
  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 猪苓(チョレイ)
  • 白朮(ビャクジュツ)
  • 桂枝(ケイシ)

沢瀉は、膀胱に直接働きかけて利尿作用をもたらす生薬ですが、水分の代謝によい茯苓と猪苓を配合していることで、相乗効果によって利尿作用を強化しています。

白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)

熱を冷ます効果の高い白虎湯(ビャッコトウ)に、生薬の人参を加えた処方です。

白虎湯は、別名を石膏知母湯(セッコウチモトウ)といいます。

白虎加人参湯は、熱を冷ましながらも、その熱によって失われた水分を補う働きをする漢方薬です。

効能効果

比較的体力がある人向きの漢方薬です。

熱感があるときや、熱で乾燥することによるかゆみなどに用いられます。

とても喉が渇いて、たくさんの水分を欲する症状があるときに有用です。

また、そのような症状をともなう糖尿病にもよいとされます。

白虎加人参湯は、ドライマウス患者の症状の緩和が見られたとする、臨床報告もあります。

生薬

白虎加人参湯は、以下の生薬の組み合わせで成り立っています。

  • 石膏(セッコウ)
  • 粳米(コウベイ)
  • 知母(チモ)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 人参(ニンジン)

石膏は、天然の含水硫酸カルシウムのことで、この生薬が体の熱を冷ますために中心となって働きかけます。

知母はユリ科の根のことで、石膏の働きを助けながら、熱によって失われた水分を補う働きもある生薬です。

人参は朝鮮人参ともいわれ、滋養強壮の効果がよく知られていますが、高熱よって汗が出るときや、喉が渇く症状にも用いられます。

竹葉石膏湯(チクヨウセッコウトウ)

竹葉石膏湯は、病気などで発熱があった後も、その余熱により脱水症状になって喉が渇くといった症状に用いる漢方薬です。

熱により失われた水分を補って肌や粘膜を潤し、消耗した体力を回復させて喉の炎症なども鎮めます。

体力があまりない人向けなので、白虎加人参湯と比較すると、高齢者や子供も利用することができます。

効能効果

竹葉石膏湯は、体力虚弱でかぜが治りきらず、たんが切れにくく、ときに熱感、強いせきこみ、喉が渇いたときに用います。

渇いたようなせき(からぜき)、気管支炎や気管支ぜんそく、喉の渇きや軽い熱中症に効果があります。

市販薬では、水なしでその場で服用できるタイプもありますので、夏場の熱中症対策として常備しておくと安心です。

生薬

竹葉石膏湯は、以下の生薬の組み合わせで成り立っています。

  • 石膏(セッコウ)
  • 麦門冬(バクモンドウ)
  • 粳米(コウベイ)
  • 半夏(ハンゲ)
  • 人参(ニンジン)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 竹葉(チクヨウ)

麦門冬は潤す作用があり、熱があるときの喉の渇きに用いられますので、風邪の漢方薬としても知られています。

竹葉ササクサの葉で、熱を冷ます作用があります。

この処方は、竹葉と石膏が体の熱を冷ます主な働きをし、ほかの生薬によって潤いをもたらす作用があるので、軽い熱中症によいのです。

副作用や使用上の注意点

次のような方は使う前に必ず担当の医師または薬剤師、医薬品登録販売者に伝えてください。

  • 以前に薬を使用して、かゆみ、発疹などのアレルギー症状が出たことがある
  • 妊娠または授乳中
  • ほかに薬などを使っている

これらに当てはまらなくとも、甘草は食品にも含まれていることがありますので、取りすぎないよう注意が必要です。

また、漢方薬は個別の体質に合わせて服用するものですので、購入の際には薬剤師または医薬品登録販売者に相談しましょう。

熱中症と漢方薬についてのまとめ


日本の夏は、ほかの国と比較しても高温多湿で、過ごしにくいといわれています。

ですが、さまざまな工夫をしたり、正しい知識をもって対策をしておけば、いざというときにも安心です。

日傘や帽子といったアイテムに加えて、体質に合った熱中症対策の漢方薬を常備することをおすすめします。

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記事執筆・監修

国際中医薬膳師/調理師(ハラール認証)/医薬品登録販売者/フードコーディネーター2級/マスターオーガニックコーディネーター/オーガニックコスメマイスター/加工食品診断士

當房 清香

医薬品登録販売者としてOTC薬(市販薬)を販売する業務に就く傍ら、健康や薬に関する記事ライターとして活動。
調理師やフードコーディネーターの資格を保有し、更にはオーガニック・薬膳・食品添加物に関する資格も持っており、料理研究家。
「自分の未来は、現在カラダに取り入れているものでつくられていく」
ことを幅広い視点でお伝えしている。
元裁判所書記官であるが、妊娠・出産を機に転身し現在に至る。

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