漢方薬でよく使われている生薬の名称と成分名、薬理作用とは?
漢方薬は沢山の生薬の組み合わせで作られています。
しかし、生薬名は難しい漢字がならんでいて覚えられないし読み方もなかなか想像しがたいものが多いですよね。
そこで今回は生薬名・成分名その薬理作用について案内してきます。
漢方薬の基本
まずは漢方薬の基本からご説明します。
漢方薬は自然由来の素材である生薬を組み合わせることで作られています。
よく間違われるのが民間薬との違いで、民間薬は薬効のある成分1種類のみで作られています。
また、漢方薬はしっかりと医学的根拠のある漢方医学に則って作られているため、国で認められた医薬品です。
しかしドラッグストアや薬局・インターネットなどで手軽に手に入れることのできる身近なものです。
そんな漢方薬は今や294処方もあります。知識を身につけたらとても心強い存在になりそうですね。
次は漢方薬で使われている生薬名・成分名とその薬理作用について詳しくご説明します。
鬱金(うこん)
ウコンは二日酔いに効いたり滋養強壮作用があるとして目にする機会の多い生薬の一つです。
香辛料としても使われていて、ターメリックという名前で販売されています。
医薬品のほかにカレーの原料やたくあんを始めとした食料品の着色料などに使われています。
年間3000トン以上も輸入されている隠れた食料品なのです。
成分名
- ポリフェノール類(クルクミン)
- ターメロン
- α―クルクメン
- クルクモール
- カンファー
など
薬理作用
漢方医学ではウコンは血の流れを良くしたり痛み止めの効果があると言われています。
腹痛や月経痛に効果があり、痛みを伴う体内部の症状に使われています。
近年の研究によってウコンには体に良い成分が多数あることもわかりました。
クルクモールは抗がん作用があるので現代病であるガンを防ぐのにとてもオススメです。
更にコレステロールを溶かして高脂血症に有効的であるα―クルクメンも含まれています。
茴香(ういきょう)
漢方薬ではセリ科ウイキョウという高さが2メートルにも達する多年草の果実を乾燥させたものを用いています。
日本で生産されているのは長野県などわずかな地域で、ほとんどは外国からの輸入です。
ウイキョウもウコンと同様に海外ではスパイスとして使われていて、「フェンネル」と呼ばれています。
古代ギリシアでも使われいた薬草で、歴史的に見ても信頼性のある生薬です。
成分名
- アネトール
- アラキド酸ドコシル
- ピネン
- リモネン
- エストラゴール
など
薬理作用
ウイキョウは体内へ入ると溜まっている気を動かし、体内循環を活発にすると考えられています。
胃腸の動きを活発にさせ、消化促進や胃腸内にたまったガスを排出する効果があります。
神経性胃炎や慢性胃炎、胃酸過多、腹痛、生理痛など痛みを伴う胃腸の症状にも効果があります。
胃腸が弱い人や生理痛の激しい人はウイキョウが配合されている漢方薬を服用してみてください。
甘草(かんぞう)
甘草はマメ科のウラルカンゾウやスペインカンゾウの根などを乾燥したもので、とてもポピュラーな生薬です。
高さ40~70㎝程の多年草ですが、長さが1m以上にもなる大きな根茎が四方に伸びています。
生薬に用いられるのはこの大きな根茎や根っこを乾燥させたものです。
甘草には「ウラルカンゾウ」と「スペインカンゾウ」の2種類がありますが種類が違うから効能が違うわけではありません。
成分名
- グリチルリチン
- グラブリジン
- イソフラボノイド
- フラボノイド
など
薬理作用
甘草には筋肉の急激な緊縮によって起こる痛みを軽減する効果があります。
鎮痛作用のほかに腹痛、下痢、動悸、腫れ物などの症状にも用いられています。
甘草が多くの漢方薬に配合される理由は他の生薬の効能を高める効果があるためです。
さらに毒性を緩和させる効果もあり、非常に使い勝手のいい生薬です。
砂糖の30~50倍の甘味を持っているので、苦くてまずいという漢方薬のマイナスイメージが覆るでしょう。
葛根(かっこん)
葛根はマメ科のクズの根っこを乾燥させたものです。
太く長い繊維性の強い根っこは地中深くにまで根付き、地盤を安定させます。
その根っこにはでんぷんが非常に多く含まれていて、でんぷんの結合性を利用した製菓に利用されています。
和菓子の葛きりもこの葛根から出来ているのです。
成分名
- ダイジン
- ダイゼイン
- プエラリン
など
薬理作用
身体を温める効果がある葛根は風邪薬を中心に配合されます。
胃腸の調子が悪い時にも服用するといいとされていて、胃腸の鎮痛剤としても配合されています。
血行を良くする効果もあるので筋肉痛や血行障害、神経痛といった症状にも有効です。
有名な漢方薬に「葛根湯」がありますが、これは葛根をメインに作られています。
桂皮(けいひ)
桂皮とは熱帯に生育するクスノキ科の常緑樹、その樹皮です。
別の呼び名としては製菓にも使われている「シナモン」が有名です。
原産地は中国南部からベトナムあたりで、スパイスの王様とも言われています。
世界最古のスパイスとも言われいて、紀元前4000年ごろからミイラの防腐剤として使われていました。
過剰摂取をすると肝障害を起こす成分が含まれているので取り扱いには注意が必要です。
成分名
- クマリン
- 桂アルデヒド
- オイゲノール
- サフロール
- フェランドレン
など
薬理作用
漢方医学では停滞しているものを動かして発散させる作用があると言われています。
服用すると体温を上げて発汗し、体内の機能を回復させる効果があります。
食欲不振や胃腸の不振にお悩みの人は桂皮が配合されている生薬がオススメです。
また、糖尿病のリスクを軽減させる効果もあると言われています。
紫根(しこん)
紫根はムラサキ科ムラサキの根っこを乾燥させたものです。
日本の万葉集にも登場するほど昔から知られている植物ですが、実は絶滅危惧種に指定されています。
発芽率が低いうえにその理由としてはウイルスに弱く栽培が非常に困難なのです。
さらに近縁種の登場によって純正種の存在が脅かされているのも実情です。
現在漢方薬に使われているのは近縁種の「ホタルカズラ」や「セイヨウムラサキ」です。
成分名
- シコニン
- アセチルシコニン
- アルカニン
など
薬理作用
紫根は内用薬ではなく、外用薬として使用されています。
それも殺菌作用と抗炎症作用が高く、外傷に利用するのが一番効果があると言われているからです。
しかし口内炎や舌炎の治療にも使用されるなど応用がかなり効く生薬です。
さらに血中の熱を除去する作用があり、他の生薬とうまく組み合わせることでその効果を活かせます。
火傷や凍傷、湿疹の塗り薬に配合されるのがが一般的です。
大黄(だいおう)
大黄はタデ科ダイオウ属で、高さ2~3mに達するかなり巨大な多年草の根および根茎を乾燥したものです。
主に中国国内に生息していますが、日本にも生息していて生薬には日本産の大黄が用いられています。
劇的な効果を発揮することから「将軍」との二つ名が付いた程優れた生薬です。
西洋では品種改良されたものがスイーツの材料としても使われています。
成分名
- センノサイドA~F
- アロエエモジン
- クリソファノール
- カテコール
- トラクリゾン
など
薬理作用
大黄は便秘に効果があると言われています。
その瀉下(しゃげ)効作用は腸内細菌による作用で、効果の強さはその人の体質によります。
さらに血液の活動を活発にさせると考えられていて、活血化の作用を期待して大黄を配合している漢方薬もあります。
しかし大黄は将軍と言われるほど強い生薬で、瀉下作用の効き目が出てしまうのでかなりデリケートな生薬です。
胃腸が弱い人は服用してはいけない生薬と言えます。
茯苓(ぶくりょう)
茯苓は サルノコシカケ科のキノコの菌核でアカマツの根などに寄生しています。
外皮はこげ茶色ですが内側は乳白色です。
生薬としてはこの菌核を乾燥させ外皮を取り除いたものを用いています。
日本ではあまり馴染みのない生薬ですが、中国では茯苓の生産が盛んに行われていて一般的に知られています。
成分名
- 多糖類パキマン
- パキマ酸
- エブリコ酸
- デハイドロエブリコ酸
- ツムロース酸
など
薬理作用
利尿作用に鎮静、血行値を下げる効果があります。
これは尿細管の再吸収を抑制するためで、ミネラル類の排出量が増加します。
更に病気で弱った身体を元気にする滋養作用もあり、様々な漢方薬に配合されています。
そのほかには食欲不振・消化不良といった腸内環境の改善や動悸、不眠など更年期障害にも用いられています。
比較的体力のある人へ処方される生薬です。
陳皮(ちんぴ)
陳皮とはミカン科ウンシュウミカンの皮を乾燥させたものです。
分かりやすく説明すると私たちが冬にコタツの上に置いて食べているあの「みかん」の皮です。
あまり知られていませんが、生薬として用いられる他に七味唐辛子といった香辛料にも配合されています。
温州みかんの皮を使っているのは日本だけで、中国ではミカン科のマンダリンオレンジの皮を使用しています。
成分名
- リモネン
- リナロール
- テルピネオール
- ヘスペリジン
- ビタミンC
- カロテン
など
薬理作用
陳皮は主に腸内環境異常の症状に用いられています。
漢方医学では気を整える効果があると考えられていて、消化不良・吐き気・胃酸過多・下痢にも効果があります。
更にせきやタンを抑える効果もあり、ビタミンCで免疫力アップも期待できます。
寒くなって風邪の引きやすい冬には陳皮が配合されている漢方薬を常備しておくと良いでしょう。
附子(ぶし)
附子はキンポウゲ科シナトリカブトという多年草の塊根です。
トリカブトは毒を持つ植物として昔から知られています。
当然日本にも自生していて、山菜と間違えて附子中毒で死亡した事例があります。
漢方薬に用いられる場合は塩水に漬けたり、蒸したり、煮たりする減毒処理を行っています。
近年では加圧加熱処理したものを使用するのが一般的です。
成分名
- 猛毒性アルカロイドのアコニチン
- サコニチン
- ヒパコニチン
- 低毒性ジテルペン系アルカロイドのアチシン
- コブシン
など
薬理作用
漢方医学では陽気を補う効果があると考えられていて、虚弱体質な人の漢方薬に配合されます。
身体を温めて痛みを止める効果もあるので神経痛や関節痛にも有効です。
代謝機能失調の回復にも効果があるので胃腸が弱い人以外の漢方薬に使用される場合もあります。
附子(トリカブト)はれっきとした猛毒植物なので見かけても触らないようにしましょう。