慢性の下痢に使われる胃風湯(イフウトウ)の効果は?
繰り返す下痢には漢方薬が効果的な場合があります。
今回は、長く続く下痢症状に効果的な「胃風湯(イフウトウ)」について、効果と服用時の注意点を中心にご紹介します。
「急性」と「慢性」の下痢の違い
下痢には、急性と慢性の下痢の2種類があります。
急性の下痢は、感染症が原因の場合が多く、水分補給と抗菌薬の使用が重要です。
一方、慢性の下痢には、大腸がんや潰瘍性大腸炎、クローン病などの、器質的な疾患が原因のものがあります。
また、原因がはっきりしない慢性の下痢の場合も多くあります。
胃風湯はどんな人にいいの?
胃風湯は、中国の宋時代の「和剤局方(ワザイキョクホウ)」に収載されている漢方薬です。
急性ではなく、慢性の下痢症状に用いられる薬剤です。
血色が悪く気力がない、体が衰弱している、食欲がないような方に向いています。
主に冷えによって起こる慢性の下痢を改善します。
また、小腸、大腸、直腸の慢性炎症や、潰瘍性大腸炎、急性胃炎、慢性胃炎、神経性胃炎などの症状も和らげます。
胃風湯の配合生薬
胃風湯の配合生薬は8種類です。
当帰と川芎には、皮膚・筋肉・関節・骨・神経などを温める作用があります。
さらに、皮膚、四肢末梢の血行を改善して冷え性を治します。
また、動脈の血流を改善することで、「瘀血(おけつ):血液の流れが何らかの原因で滞ってしまった状態」を除く作用を助けます。
芍薬には、筋肉の緊張を和らげる作用があり、白朮・茯苓・桂枝には体内の過剰な水分を血液中に移動させて、利尿を促進する働きがあります。
人参と白朮には、胃腸の機能を改善する働きがあります。
粟は、胃腸の機能の改善や体を温める作用があります。
いずれの生薬も、腹痛を改善したり、鎮痛作用、鎮静作用があります。
当帰(トウキ)
セリ科トウキの根を乾燥させたものです。
血を補い、血液循環を改善します。また、鎮痛作用もあります。
芍薬(シャクヤク)
ボタン科シャクヤクの根を乾燥させたものです。
熱を取り除きます。また、血液循環を改善します。
鎮痛作用も有します。
川芎(センキュウ)
セリ科センキュウのひげ根を除いた根茎を乾燥させたものです。
血行を促進します。また、鎮静、鎮痛作用があります。
人参(ニンジン)
ウコギ科オタネニンジンの根を乾燥させたものです。
免疫機能を活性化し、体力を増進させます。
また、胃腸の働きを整えます。
白朮(ビャクジュツ)
キク科オケラの根茎を乾燥させたものです。
消化を整え、水分の循環を調節する働きがあります。
茯苓(ブクリョウ)
サルノコシカケ科マツホドの菌核を乾燥させたものです。
水分の循環を改善して、消化を整える働きがあります。
桂皮(ケイヒ)
クスノキ科カツラの樹皮乾燥させたものです。
身体をあたため、痛みを取り除く作用があります。
また、血行を改善し動悸を抑える働きもあります。
粟(アワ)
イネ科アワの種皮を除いた種子を乾燥させたものです。
健胃作用があります。
また嘔吐、下痢などの胃腸の調子を整える働きをします。
胃風湯の服用時の注意点
胃風湯は、顔色が悪く食欲がない、疲れやすい時の胃炎や、冷えによる慢性の下痢がある場合に使われる薬剤です。
そのため、体力がある方には合いません。
また、急性胃炎に使用した場合、5,6日程度使用してみて効果がない場合や、慢性の症状の改善に1か月ほど使用して効果がない場合は、医師や薬剤師などの専門家に相談するようにしてください。
副作用としては、アレルギー症状として皮膚に発疹や発赤、かゆみが出る場合があります。
その場合は、服用を中止して医師に相談することが大切です。
慢性の下痢に良い食べ物
「元気の元は胃腸から」と言われているほど、胃腸は日々の体調管理においても重要です。
腸内環境は、健康に大きく寄与します。
現代において、添加物がたくさん含まれている食事は腸にとっても有害な物質が多く、腸内環境を悪くしてしまい、結果消化力や免疫力が低下してしまいます。
このように、腸内環境が悪くなると、正常な働きが行われにくくなり、水分調節がうまくできず、その結果水分の多い下痢の症状となってしまいます。
下痢が長く続く方は、腸内環境を整えてくれる食べ物を取ることが大切です。
下痢の症状を改善してくれる食べ物をいくつかご紹介します。
りんご
りんごは、腸内の悪玉菌を退治してくれる食物繊維ペクチンが豊富に含まれています。
このペクチンは、実は皮の部分に多く含まれています。
特に下痢の時は、皮をむかずにそのまますりおろして食べるのがおすすめです。
また、りんごはコレステロールを下げてくれたり、疲労回復にも効果的です。
にんじん
胃風湯の配合生薬にも含まれているにんじんもおすすめの食べ物です。
にんじんは、消化を遅らせる作用があります。
下痢の時は、腸のリズムがとてもはやく活発に動いてしまっているため、腸のバランスが崩れています。にんじんは、その腸の働きを抑えることができ、正常のリズムに戻してくれます。
はちみつ
はちみつは万能の薬と言われているほど優れた食べ物です。
良く知られている通り、はちみつには強い抗菌作用があります。
大腸菌と戦い、腸の調子を整えます。
さらに、はちみつに多く含まれているグルコン酸も整腸作用があるビフィズス菌を多くつくってくれます。
まとめ
今回は、繰り返す慢性の下痢症状に効果がある「胃風湯(イフウトウ)」についてご紹介しました。
下痢症状に使用される漢方薬は、その他にもたくさんあります。
漢方薬を選ぶときは、「自分はどんな体質なのか」と、「どんな体質向けの漢方薬なのか」を知った上で選択することが非常に大切です。
また、慢性の下痢の中には、重大な疾患が原因で起こるものもあります。
安易に自己判断せず、必要に応じて専門医を受診するなどの対応が大切です。